2017 坂井淑恵:Yoshie Sakai

 

 

“ UNDER WATER:New paintings ”

 

2017, Dec. 2 ( Sat. ) - 23 ( Sat. )

 

 

 

 

坂井淑恵の作品では「人」と「水」が大きなテーマとなっています。坂井の作品において「人」とは、自身の感情や他者との関係性を意味し、「水」は人を取り巻く状況や環境、または個人の立ち位置から垣間見る空間・景色のようなものを表現していると言って良いでしょう。

2014年の個展「UPSIDE-DOWN」では画面中央に水面を表す境界があり、それを境に反転する人影が描かれていました。坂井の画面では通常の認識の様な水面を境とした、水上・水面・水中と言う状況ではなく、上下から水中が迫り、画面中央で接していると言う状況・空間構成になっていました。

 

今回の「UNDER WATER」では、上下ふたつの空間が正に水中という空間に統合される感覚が伺われます。様々な環境・感情が坂井というアーティストの中で融合し新たな歩みとなる、そのような絵画群が今回展示される事でしょう。澄んだ青系や緑系の色は心穏やかに、抽象的な絵画内容は、それぞれの個人の局面に寄り添いその想いを画面に投影させる事が出来ます。思わず笑みがこぼれる様な人物は、不器用ながらも歩みを止めない真摯で頑固な人の象徴のように思われてきます。絵画とはゆっくりと眺め、個人の感情に寄り添ってくれるメディアなのだと、坂井の作品は再確認させてくれます。1990年代、現代美術で絵画がタブー視されていた時代にいち早く自身の思うままに自由に絵画を描いたアーティスト坂井の、その強さと生命力は今も作品の中に脈打っています。ただ美しく明るい色彩の中に、ただ確固として、柔らかく密やかにある息吹をご覧下さい。